五体投地 三千佛礼拝行

今日は自転車から離れて。
個人的な出来事で恐縮ですが、私アイハラ昨年末に、お客様でもあり、もはや家族ぐるみの
お付き合いをさせていただいている友人でもある"湘南の風RZ"さんが、住職を勤められて
いる大磯のお寺にて、歳末の礼拝行、三千礼拝 仏名会に参加させていただきました。

三千礼拝 仏名会(ぶつみょうえ)とは、その年の罪業を懺悔して、新しい気持ちで年を越す為に、
年末に行う礼拝行だそうで、1日1000回 × 3日間 = 合計3000回の五体投地を行うもの。
どうやら、垢にまみれにまみれた私を見かねて、RZさんが私に声を掛けて下さったようです。
「一緒にやりませんか?」と。
もちろん、私にとって初めての体験です。

三千というのは、「過去・現在・未来」に存在する各1000、合計3000の仏様。
3000の仏様の中には、普段はほとんど耳にすることのないような、"マイナーな"仏様も
相当数含まれているとのこと。
その全ての仏様に礼拝するということで、「究極の礼拝」という意味を持つようです。
3000回の五体投地を成し遂げることは、肉体的にも精神的にも非常に苛酷なようで、
修行的な側面が強いそう。
お寺の行事として、特にこの過酷な修行を行わなければならない、というのは決まりとして無い
ようなのですが、ご住職であるRZさんが、自らと自らが守るお寺の為に、数年前から自発的に
行っている行事だそうです。

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そもそも五体投地とは、仏教において最も丁寧な礼拝方法の一つとされ、両手、両膝、額の
五箇所を地面(床)につけ、仏や高僧を礼拝すること。
対象への絶対的な帰依を表し、現在の日本でも、いくつかの宗派にて行われる礼拝方法
だそうです。
接足礼(せっそくらい)とも呼ばれ、今でもスリランカなどでは、日常的に行われているそう。

1.礼拝する対象を向き起立したまま蓮華合掌をする
2.合掌したまま一礼する
3.合掌を続けたまま両膝をつく
4.合掌を崩しながら手の指同士をつけたまま手のひらを上へ向け両手を体と垂直方向に前へ出す
5.額を地へ付ける
6.両手を耳の横の高さ程度まで上げた後に元に戻す
7.起立して合掌を行い直る
(wikipediaより抜粋)

後頭部という人間の一番の急所をさらし、両手を上に向けて上げるということは無抵抗の姿勢。
仏の前に自己をすべて投げ出す。すべてをまかせきるという敬虔な姿が、五体投地なのです。

過去にテレビの映像などで、チベット仏教において、巡礼地を目指し、五体投地を繰り返し
ながら進む現地の人の姿を見たことがありました。
全身を地面に投げ出し、さながら尺取虫のように地面を這いながら進む壮絶な姿に衝撃を
受けたのを覚えています。
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と、こんなことをエラソーに書いてはおりますが、私が伺ったタイミングは、礼拝最終日の
午後2時頃。3000回の内、最後の最後の200回を残すところでした。
そうです。まさにオイシイところに現れたヤツといった感じで…
3日目の最後、一番キツイところに、私がケロリとした顔をして登場したのです。

本堂の扉を開けると、眩い袈裟を身につけたRZさんが微笑みながら、待っていてくれました。
ちょうど100回毎の小休止の所で、堂内に漂うお香の香りの中に、ピリッとした空気が
感じられます。
しかし驚いたのは、目の前に居るのは普段接しているRZさんではなく、圧倒的な威厳に満ちた
一人の僧侶の姿であったこと。
当たり前のことなのかもしれませんが、お客様や友人としての彼の姿しか知らなかったので、
その姿に、いささかたじろぎました。
心なしか身体もいつもより大きく感じられます。

導師であるRZさんがご本尊の前に座し、その後ろに3日間共にされている檀家の女性の
方がお一人。
その隣に、私の座布団と三千の仏様が書いてある三千佛名経が用意されていました。
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「私が、南無(な~む~)と先に言いますので、その後に続いて、経本に書いてある仏様の
名前を唱えて下さい。」
「動きは後ろから見て、私の動きを真似て下さい。」とRZさん。
私の二百佛礼拝行が始まりました。

「カン」と小さな鐘の音の後、
「なぁ~むぅ~」とRZさん(以下ご住職)の、腹の底から出される独特の声が堂内に響きます。
それに続き、目の前の経本の振り仮名を目で追いながら、「ホニャララ、ホニャララ、佛(ブツ~)」
と唱えます。
「南無」とは、「帰依します。」という意味だそうです。
「私は、ホニャララ仏様に帰依します。」という宣言を、3000の仏様に対して行うのです。

その唱えている間に、
立った姿勢で合掌。
そこから膝まづき、頭を下げて額を床につけ、手を上げる。
また、立ち上がり、合掌。

これをひたすら繰り返すのです。
ですが、目の前のお経を目で追うと、動きに全くついていけなくなり、
動きを真似ようとすると、仏様の名を唱えられない。
一見単純な行為のようですが、足の運びがおぼつかず、無様にぎっこんばったん。
また、思っていたよりも遥かに1回のスピードが速く、全くついていけません。
目の前のご住職とは、まったく別の動きになっています。

経本に書かれている仏様のお名前も、普段全く耳にしたことがない名前ばかり。
短い名前もあれば、やたらに長い仏様の名前もあり、様々。
おまけに私は近視が強く、立ち上がると経本の字がほとんど見えません。
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まずは、動きを体得しようと、動きを真似ることに集中します。
お経を唱えることは、二の次です。
ですが、何度繰り返しても動きが上手くなりません。
しかし、もうスタートしちゃってますので、100佛終わるまで止まることは許されません。
ぎくしゃくしながらも、20回ほどもすると、身体はポカポカと温かくなり、50回を超えると、
額には汗が滲んできました。

「こりゃ、たいへんな所に来ちまったぞぉ…」
というのが、その時の私の偽らざる心境でした。
その後も、ぎっこんばったん、ぎっこんばったん…。
私の最初の100佛が終わりました。

100佛ごとに、小休止が入ります。
100佛に所要する時間は、おおよそ30分程。
ですので1日1000佛ですと、約5時間…。
5時間ものあいだ、この動きを繰り返す。
おまけに、それを3日連続。
これは気の遠くなるような行為だ…。

そんなことをボヤッと考えておりますと、隣に座る檀家の女性の方から、
「仏様の名前を唱えないとダメですよ~。」と言われてしまいました。
「声に出し、唱えることに意味があるのです。」と。
お話をうかがってみると、座って頭を下げた際に、経本を見て、次の仏様の名前を
確認しておくと良いと教えてくれました。
「オッシャ!やったるで!」

後半の100佛が始まりました。
私以外の二人にとっては、3日間続いた中の、最後の100回です。熱が入ります。
私の動きはまだぎこちないのですが、隣の女性が教えてくれたように、頭を下げた時に
仏様の名前を確認すると、たしかに具合がいいようです。
また、足のつま先に重心を置いて足をさばくことで、動きが安定してきました。
重心を低く保ち、上半身がバタバタしないように心掛けます。
少しずつですが、動きと声が一致してきました。

自転車でもそうですが、ヨーガでもピラティスでも、重心は低いほど良いようです。
確かにRZさんは、普段の生活様式からか、身体の重心が非常に低い位置にあるようで、
すごく安定している様子が、自転車に乗っている時からうかがえました。
過去に一緒に温泉に行った際に、浴衣姿を見た時にも、「何か自分とは違う。」と
感じていました。たぶん、これです。重心の違いなのです。

ほの暗い堂内には、お香の煙が漂い、ご住職の声もその煙に乗るかのように、
フワフワと漂っています。そこに自ら発した声も漂い…。
動作に集中し、仏様の名前を唱えることを一心不乱に行っていると、何だか不思議な
心地良さを感じ始めました。
目の前のご住職は、最後まで力強く、五体投地を行っています。
後ろ姿は、まるで踊っているかのようです。
その背中の向こう側には、別の世界が広がっており、彼は確かにその二つの世界の狭間に
居る人なのだぁと、私はその背中を見ていました。
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何とか、後半の100佛を終え、私の200佛礼拝が終わりました。
最後に、ご住職が3000礼拝終了の?念仏を唱えている中で、私の健康と交通安全を
唱えて下さったようです。
150回を超えた頃から、立ち上がるのにヨタヨタし始め、気がつくと起きる際に
手の反動を使って立ち上がっている自分が居ました。
200回終えて、少々時間が経つと、足がガクガク震えています。
太腿の前側が完全にやられています。段差を降りるのにも一苦労。
3000回の礼拝を終えたRZさんも、さすがに身体がボロボロのようで、先程までの力強さとは
打ってかわって、ヨチヨチと歩いています。まさに気力が彼を動かしていたのでしょう。

終了後は、休憩がてら彼の子供たちと、お土産に持参したカルタに興じ、その後外にて、
夕食を共にしました。
お姉ちゃんにカルタで負けたのが悔しくて、大泣きして疲れたのか、料理屋に入ったとたんに
眠ってしまった長男を、食後、RZさんはおんぶしながら、ヨチヨチと歩いてお寺に戻ります。

私よりずいぶんと年下のはずのご住職と、その背中でスヤスヤと眠る跡取りの寝顔を見ながら、
お寺という偉大なる歴史の、担い手である彼ら4人の家族の、強さと逞しさを感じ、何だか
清々しい気持ちになりました。

たかが200回の五体投地を行ったくらいで、あれこれ言うのもおこがましいのですが、
その後、数日間見舞われた激しい筋肉痛が治まった後も、私の身体の中には、
この時の出来事がしっかりと刻まれています。

自転車が取り持ってくれた、RZさんとの縁起に感謝しつつ。
今年の年末は、丸一日、1000回の礼拝を行いますよ~!
その前に、スクワットの筋トレやっておかねば。
by assos-pst | 2015-01-11 18:42 | 東京近郊サイクリング